要点
  • 負荷心筋シンチグラフィで正常と判定された例では予後が良好であることを知っておく必要がある。
  • 一般的に正常心筋SPECTの場合、米国でも日本でも、重篤な心事故の発生率は0.6%/年程度である。
 
  • 虚血性心疾患の疑いまたは虚血性心疾患の患者においてはリスクを層別化して治療法を決定する。心臓核医学検査ではリスク層別化を行うことができる。
  • 欧米での報告でも、AHA/ACC/ASNCによる心臓核医学ガイドラインでは、心筋SPECTが正常の場合の重症心事故を年間0.6%としている。
  • 我が国ではJ-ACCESS研究が行われ、虚血性心疾患の疑いで心筋SPECTを施行した>4600例で予後調査が行われた。正常心筋シンチグラフィの予後については、年間のハードイベントすなわち心臓死、非致死性心筋梗塞は0.63%であり低リスクと考えられる。
  • ただし、正常心筋シンチグラフィであっても高齢者、糖尿病合併、高血圧の有無といった要因は心事故発生に影響を与えるため、心筋シンチグラフィ所見に加えて個々の症例でこれらの臨床因子を加味して判断して行く必要がある。
  • J-ACCESSサブ解析の中では、正常心筋シンチの定義は、先に報告されている日本人の正常値の検討に基づいて決定した。3種類の正常の選択基準を表に示す[1]。SSS=Summed Stress Score。

心筋SPECT正常の基準の例(文献1による)

正常の基準による群
原理
1群 SSS≦3
第2群 SSS≦3かつESV正常(男性 <60ml, 女性 <40ml)
第3群 SSS≦3かつESV正常(男性 <60ml, 女性 <40ml)、EF正常(男性 >49%, 女性 >55%)
  • J-ACCESS研究において正常心筋血流イメージングと診断された症例の予後は低リスクであることが確認された。虚血性心疾患の疑いで心筋シンチグラフィを施行された症例の半数近くは正常SPECT症例であり、実際に正常血流イメージングと判断される症例は高頻度に見られる。
  • 正常心筋血流イメージングであると診断する際の注意点
    • SPECTの画像の質が良い
    • 運動負荷で十分な負荷がかけられない場合は(目標心拍数の85%以上)、薬剤負荷を施行する
    • タリウムでは肺の取り込みが増加がない
    • 一過性内腔拡大(負荷後のSPECT像での左室容積拡大)がない
    • Gated SPECTで左室の壁運動異常や収縮時壁肥厚率(wall thickening)に異常がない
  • 負荷心筋SPECTを用いたリスク層別化を我が国の虚血性心疾患患者管理に生かしていく必要がある。臨床医学では虚血性心疾患患者を治療することにより、最終的に心筋梗塞のリスクを減らし予後を良くすることを目指している。したがって、正常症例の予後を考え治療を行う必要があり、リスクという観点からみて一般的には、正常シンチグラフィ症例にさらに侵襲的処置は必要ない場合が多い。
 

参考論文

  1. Matsuo S, Nakajima K, et al. Prognostic value of normal stress myocardial perfusion imaging in Japanese population: a study based on the J-ACCESS study. Circ J 2008;72:611-617.

[SM: 2010.08.01]