要点
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心筋バイアビリティとは
- 左室機能障害と慢性冠動脈疾患とを有する患者においては、血行再建術によって左室機能や症状が改善される症例がある。このような症例では、安静時虚血や一過性の反復虚血によって心筋細胞の正常な収縮性は欠如しているが、細胞膜は健全に機能し、十分な代謝活性を維持しているものと考えられる。この細胞膜の健全性と種々の代謝活性を評価することが重要である。
- 心筋バイアビリティが保たれている場合には血行再建術後にその領域の壁運動が改善する。核医学的手法により心筋バイアビリティを評価して、血行再建術によって機能的回復が望める心筋を同定できる。
- 病態生理としては、急性虚血解除後の機能不全である気絶心筋と、慢性虚血による冬眠心筋として理解されている病態が含まれる
- バイアビリティ評価を行い診療することで死亡率を減らせるという報告もある[1]。
心筋血流製剤によるバイアビリティ評価の基準
- 視覚的には、SPECTにより誘発虚血が見られるか、安静時の心筋集積が比較的保たれているならばバイアビリティは保たれていると判断される。
- トレーサー集積を定量評価することで心筋生存能の精度があがる。血行再建術後の左室機能改善の予測に201Tlもしくは99mTc-sestamibi,99mTc-tetrofosminのトレーサー集積率が50-60%以上であれば、心筋生存能があり、血行再建術後の機能改善が期待できる。
- 201Tl心筋血流SPECTによる評価では3-4時間後の安静像(負荷後後期像)あるいは再静注像で出現する再分布現象は心筋生存能の良い指標である。
多施設共同研究結果からバイアビリティを読む
- 負荷時の誘発虚血の所見は固定性欠損よりも左室機能回復の強力な予測因子となる。
- 99mTc-sestamibi心筋SPECTを用いた我が国の多施設共同研究結果により、血行再建術後の心筋の機能的回復を予測するためにgated SPECTによるQGS解析と心筋血流評価が重要であることが判明した[2]。
- 非同期SPECTでの心臓への取り込みの他に、gated SPECTでの収縮末期の取り込みもバイアビリティ評価の重要な指標である。
- 局所壁運動の改善予測を行う場合の最適なカットオフ値は、非ゲート像では約60%、収縮末期マップで約50%であった。
- 局所での壁運動予測に比して、駆出分画の改善予測の方が予測率が低い傾向がある[2]
- 駆出分画の5%以上の改善予測には、非ゲートマップでは41%であり収縮末期マップでは34%
- 駆出分画の5%以上の改善に必要なバイアビリティのある心筋セグメント数は、非ゲートマップで>2セグメント、end-systoleマップで>3セグメント
BMIPP心筋シンチグラフィによるバイアビリティ評価
- 123I-BMIPP心筋シンチグラフィを用いてバイアビリティ評価が可能である。
- 心筋血流に比較して、脂肪酸代謝が低い乖離所見は、バイアビリティを示す。
FDG-PETによるバイアビリティ評価
- FDG-PETを用いてバイアビリティ評価が行われる。
- 心筋血流の低下所見が認められても、FDG-PET上で糖代謝が正常かむしろ亢進しているならその領域の心筋は生存していると考えられる。このような血流と代謝のミスマッチ領域をもつ患者は心事故を起こしやすく血行再建が必要性がある。
心筋バイアビリティの核医学的判定方法
方法
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原理
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201Tl負荷―安静 | 細胞膜機能(Na-Kポンプ機能)、心筋負荷による虚血と安静時残存血流 |
201Tl安静―再分布 | 細胞膜機能(Na-Kポンプ機能)、安静時の残存血流 |
99mTc-MIBI, tetrofosmin | ミトコンドリア機能、残存血流 |
18F-FDG | 糖によるエネルギー代謝の変化 |
参考論文
- Allman KC, et al. Myocardial viability testing and impact of revascularization on prognosis in patients with coronary artery disease and left ventricular dysfunction : a meta-analysis. J Am Coll Cardiol. 39:1151-8,2002.
- Nakajima K, et al. Prediction of functional recovery after revascularization using quantitative gated myocardial perfusion SPECT: a multi-center cohort study in Japan. Eur J Nucl Med Moll Imaging 35:2038-48,2008.
[KN: 2010.08.01/2019.03.31]