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MIBG検査の心/縦隔比の標準化

要点
  • 心筋MIBG検査においては、心/縦隔比(H/M比,HMR)が一般的に用いられているが、カメラやコリメータによって、その値が一定にならないために、標準化が必要であった。
  • そこで、較正ファントム実験を施行して、そのカメラーコリメータ間のH/M比の差異を相互変換する方法を考案した。
  • さらに、最も一般的な中エネルギー(ME)コリメータの条件に変換することにより、多施設のH/M比を較正することも可能となる。
 
MIBGにおける標準化
  • MIBG検査の標準化にあたっては、その画像収集方法、関心領域の設定方法、最も広く利用されている心縦隔比(H/M比)と洗い出しの計算方法、H/M比の施設間差異の補正、心縦隔比の過去の論文あるいは研究との比較など、いくつかの要素がある。
  • 本稿ではMIBGのplanar像用の較正ァントム実験と、それに基づく変換係数の利用方法について説明する。
  • 当サイトの前項目でも述べたように、カメラとコリメータの条件により、計算されるH/M比は異なるため、自施設でのガンマカメラ更新、他施設との比較、多施設での比較にあたっては何らかの補正が必要とされていた。そこで、この条件差による計算値の補正のために、Triple Energy Window (TEW)法、Iodine Dual-energy Window (IDW)法などの複数エネルギーウィンドウ法や、ファントム実験に基づく補正方法が提案されてきた。ここでは、ファントム実験に基づく補正方法(すなわちphantom cross calibration法)について記載する。

 

較正ファントムと変換係数

  • H/M比算出用の較正ファントムは、心臓、縦隔、肝臓、肺の各臓器の部分をくり抜いて貼り合わせた構造になっており、I-123がその濃度によらずに均等に内部に広がるようになっている。従って、臓器間のカウントの比率を容易に一定にすることができる。このファントムにより心臓と縦隔のカウントを求めて、H/M比の測定値とするが、1ファントムの表裏で2点のデータ点が得られる(2ファントムで4点)。
  • 一方、数学的に計算された値(厚さと減弱のみを考慮した理論値)がわかるので、測定値との関係をプロットすると、直線関係になる。この直線の傾きを、そのカメラ・コリメータシステムにおける変換係数(K)と定義する。

 

コリメータによる変換係数の違い

  • コリメータは大きく分けると低エネルギー(LE)用と中エネルギー(ME)用に分かれるが、実際に国内の84施設、225条件で測定した値を見ると、単純にLEとMEの2群ではなく様々な中間的特徴をもつコリメータがあることが分かる。この一覧を以下に記す。 

  • ここで、標準化するコリメータの条件としては、MEコリメータで最も汎用されているK=0.88を利用することにした。
  • 各施設の変換係数Kiを算出後、施設のH/M比をHMRi、標準化後のH/M比をHMRstdとすれば、HMRstd-1=Kstd/Ki ×(HMRi-1) で計算できる。この変換のための直線回帰式では、常に(HMRi, HMRstd)= (1,1)を通ることに注目したい。 

図:カメラA固有のHMRaを数学的に計算された理論値HMRrefに変換し(変換係数Ka)、次いでHMRrefをHMRstandardに変換する。

 H/M比をME標準値に変換した場合の正常値

  • 上記の表のMEGPに相当する変換係数0.88を標準的なMEコリメータとみなした。
  • 日本核医学会データベースのH/M比の正常値を計算すると、早期像、後期像ともに、正常範囲の下限値は2.2になる。

 

過去の研究からの標準MEコリメータへの変換例

  •  ADMIRE-HF研究(Jacobson et al. JACC 2010)では心不全の重症心事故を規定する MIBG H/M比の境界値は1.6(LEHRコリメータ)であった。
    • これをME標準のH/M比に変換すると2.0となる。
  •  日本の多施設プールデータ研究(Nakata et al. JACC CVImaging 2013)では心不全の重症心事故を規定する MIBG H/M比の境界値は1.68(LEコリメータ)であった。
    • これをME標準のH/M比に変換すると2.0となる。
  •  Lewy小体病のメタ解析研究(King et al. Movment Disorder 2011)ではLewy小体病を診断するH/M比の境界値は1.77であった(LEコリメータが多いが全て記載されていない)。
    • これらの研究で使われたコリメータを一般的LEと見なし、ME標準のH/M比に変換すると2.13となる。

 

関連文献

  • Nakajima K, Matsubara K, Ishikawa T, et al. Correction of I-123-labeled meta-iodobenzylguanidine uptake with multi-window methods for standardization of the heart to mediastinum ratio. J Nucl Cardiol 2007; 14:843-851

  • Nakajima K, Okuda K, Matsuo S, et al. Standardization of metaiodobenzylguanidine heart-to-mediastinum ratio using a calibration phantom: Effects of correction on normal databases and a multi-center study. Eur J Nucl Med Mol Imaging 2012;39:113-9

  • Nakajima K, Okuda K, Yoshimura M, et al. Multicenter cross-calibration of I-123 metaiodobenzylguanidine heart-to-mediastinum ratios to overcome camera-collimator variation. J Nucl Cardiol 2014;21(5): 970-978

  • Slomka PJ, Mehta PK, Germano G, Berman DS. Quantification of I-123-meta-iodobenzylguanidine heart-to-mediastinum ratios: Not so simple after all. J Nucl Cardiol 2014 (Epub ahead of print)

[kn: 20140820, 0908]