要点
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運動負荷試験
- 前処置
- 通常では検査前に各種狭心症薬は中止する方が望ましい。β遮断薬はなるべく中止する。
- 食事は検査の3時間前は絶食あるいは軽食にする。
- 負荷方法
- トレッドミルを用いる場合
- 通常Bruceの方法に従って3分ごとに傾斜角度とスピードを増加させる。
- 自転車エルゴメーターを用いる場合
- 通常臥位あるいは座位にて負荷を行う。
- 25W あるいは50Wから負荷を開始し、3分(あるいは2分)ごとに25Wずつ増加する多段階負荷が用いられる。
- 負荷終了点に達したところでトレーサーを投与しさらに1分間同レベルの運動負荷を持続させて終了する。
- 補足事項
- 運動負荷により冠血流を増加させ、必要量の酸素を供給しているが、double product(収縮期血圧 x 心拍数)は心筋酸素消費量と良く相関するといわれ、運動負荷試験は心筋虚血を誘発する方法として優れている。
- 運動負荷検査により運動耐容能、血圧、脈拍の変化、心電図変化といった情報も得られる。
- 十分な運動負荷がかけられない場合に虚血の偽陰性が含まれる可能性があることに注意が必要である。
トレッドミルエルゴメータTl-201を使用した運動負荷検査
- タリウム負荷運動負荷心筋SPECT検査のプロトコールの例を下図に示す。
- 早期像(負荷):注射後約10分後に、負荷時像の撮影を開始する。
- 後期像(安静):3-4時間後に出現する再分布現象は、安静時の画像に近い。可逆的な誘発虚血や心筋生存性の診断に用いられている。
- 再静注法について
- 心筋細胞の生存性があるにもかかわらず再分布が明らかでない固定欠損像を示し、心筋生存性が過小評価されることがある。このためタリウムを再静注して判断する方法がある。
- 再静注のタイミングは,通常の後期像を撮る場合はその後に追加投与するが,後期像を省略する場合は負荷時SPECT撮像直後に追加静注をしても良い。
Tc-99mを使用した運動負荷検査
- Tc-99m sestamibi/tetrofosminはタリウムのような再分布現象がないので2回の投与により心筋虚血やバイアビリティの評価を行う
- 一日法
- 同一日に時間をずらして検査を行う。
- 負荷を先に行う方法と安静を先に行う方法とがある。
- 初回検査時に投与したRIが2回目の検査時にも残存しているために検査の間隔や、2回目の投与では2-3倍の投与量を用いる
- 二日法
- 負荷と安静を別の日に施行し、両者の結果を比較する。
- この場合は、投与量や収集時間は同一で良い。
- トレッドミルを用いる場合
負荷の中止基準
- 自覚症状として中等度以上の胸痛の出現
- 息切れ、下肢疲労など運動継続が困難な場合
- 心拍数:年齢別予想最大心拍数の85%以上、すなわち(220-年齢)*0.85
- 心電図での虚血性変化:高度な虚血性ST変化(ST上昇または0.2mV以上の水平型あるいは下降型ST低下)
- 重篤な不整脈の出現:心室性期外収縮の頻発(多源性心室性期外収縮、R on T型心室性期外収縮、全心拍の20%以上)、高度な徐脈性不整脈
- 血圧の過度の上昇:収縮期血圧が250mmHg以上を連続して記録、または2回以上連続して10mmHg以上血圧が低下し、かつ、負荷前値より下がった場合
- その他、医師が適時判断する必要がある
[SM: 2010.08.01]