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冠動脈多枝病変と高リスクの所見を読む

要点
  • 冠動脈狭窄が2枝あるいは3枝にある場合、常に複数の領域に心筋血流SPECTの異常がでるとは限らず、生理学的に最も虚血の強い領域が主な所見となる。
  • 多枝病変あるいは重症虚血を示唆する副次的所見がある。
 

異常の見られる範囲に注目する

  • 3枝病変の場合でも3枝の冠動脈領域すべてに欠損がでることは稀であり、SPECTでの多枝の検出率は報告にもよるが50-70%である。負荷誘発虚血においては、最大負荷量を規定するのは実際に虚血を起こしている「責任冠動脈」である。また、狭窄の強さが直ちに心筋血流の異常を意味しておらず、心筋SPECTの意義はむしろ生理学的に血流障害の有無や程度を把握することにある。
  • 複数の冠動脈領域に低下または欠損が認められ、虚血性心疾患の臨床的可能性が高い場合は、多枝病変を疑い冠動脈造影が勧められる。
  • 冠動脈造影が施行されている場合や、血行再建、血栓溶解などの治療後は、必ず狭窄所見と心筋血流を併せて評価する。
 

Tl-201洗い出しのび漫性の低下

  • Tl-201負荷の際(再静注法を用いない時)、多枝病変では心筋全体の洗い出しの遅延が認められ、洗い出し率の低下は多枝病変を示唆する。ただし、運動負荷量が少ない場合に洗い出しは低値になるので注意する。
  • 運動負荷Tl-201 SPECTでの洗い出し率の平均は3-4時間で40-50%である。
 

多枝病変あるいは重症虚血のその他の所見

  • Gated SPECTでの壁運動の低下
    • Gated SPECTあるいは心電図同期心プールシンチグラフィ、エコーなどでの駆出分画の低下、壁運動異常の範囲を見る。
  • 心室容積の拡大
    • 非特異的だが、心機能の低下に伴いしばしば認められる。
  • 一過性心内腔拡大
    • 負荷時の一過性拡大は視覚的にも診断できるが、ゲートまたは非ゲートSPECTでの容積算出値が参考になる。SPECTの場合、負荷時容積/安静時容積>1.2(報告により1.12~1.22)が上限となる。

3枝病変における一過性左室拡大の例:前壁の小範囲の低下がみられるが、負荷と安静での内腔の大きさに注意

 
心基部
心尖部
負荷時
安静時
  • Tl-201での肺集積の増加
    • 安静時の肺集積の増加は、心機能低下、左室内圧上昇による肺のうっ血に伴って認められる。心筋/肺の取り込み比>約0.45を異常と見なす。

[KN: 2010.08.01, 2012.02.02]