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SPECT/CTの利用方法

 

要点

  • SPECT-CTの登場により、単にCTにより得られる形態情報とSPECTの機能情報を重ね合わせるという以上の利用が可能となった。期待されている分野として、(1)SPECTと冠動脈CTの利用、(2)冠動脈石灰化を合わせた評価、(3)X線CTの利用による減弱補正を含めた定量の改善、が挙げられる。

形態と機能の統合の意味

  •  核医学が果たす役割は、放射性医薬品の特徴を活かして血流、代謝、神経伝達などの機能情報であり、形態情報を中心とする冠動脈造影、X線CT、超音波検査等の形態情報と統合して、病気の全体像を把握する重要な手段である。

 

SPECT-CTによる冠動脈と血流の融合

  •  冠動脈CTとSPECTの融合画像の利点は、第一に、両者の融合により冠動脈の責任病変の診断精度が改善することである。冠動脈CTでは狭窄部位は検出できるが、誘発虚血が診断できるか否かという観点からは限界がある。また、石灰化部位の評価が難しい症例もしばしば経験される。しかし、冠動脈CTで異常がない場合には冠動脈疾患を否定できる(すなわちnegative predictive valueが高い)という点では報告が一致している。
  •  CTとSPECTが同一メーカーの場合はfusionがしやすいが、異なるシステム間ではDICOMで転送した画像を元に、冠動脈CTとSPECTとの適切なコレジストレーションを行った後、CTの心臓表面画像に心筋上で求めたカウントを乗せる方法がとられる。

 図の左はQPS(Cedars Sinai Medical Center, USA) 、右は ZIOSTATION(ザイオソフト)での融合画像の例。左の上段は負荷、下段は安静。下壁中央から基部の右冠動脈領域の虚血が明瞭である。

CTA-SPECT fusion

 

SPECT-CTによる石灰化の評価

  •  冠動脈の石灰化については、カルシウムスコアとしてCTを用いて定量化する方法がある。Agatstonらによる冠動脈石灰化プラークの定量では、石灰化の面積とCT値(HU)で算出され、冠動脈ごとに石灰化がスコア化される。カルシウムスコアが高値の症例では、虚血の頻度は高く、心事故発生に関する予後評価とも有意に相関することが明らかとなっている。冠動脈CTと石灰化スコアとSPECTは必ずしも一致するものではなく、動脈硬化の異なる側面を見ていることが指摘されている。
  • 参考:Agatston scoreの計算
    • CT 値が 130HU 以上の面積を有する石灰化部分を最高のCT値によって重み付けし、130-199HU=1、 200-299=2、300-399=3、400以上=4とする)。
    • 分類の一方法は、正常から軽度、中等度、高度、超高度までを<10、10-99、100-399、400-999、1000で分ける方法である。

 

SPECT-CTによる定量性の改善

  •  ガンマ線は体内で減弱するために見かけの深部カウントは低下する。SPECT-CTの登場により、CT値を用いて減弱補正を行う方法が実用の範囲で可能となっている。
  •  減弱補正の適用により心筋では特に下壁から下壁中隔でカウント低下が補正される。ただし、減弱補正のみでは下壁のみかけの「過補正」が生じるため、同時に散乱補正を行い、さらに分解能補正を施行することにより、心筋内の分布はより均一になることが期待されている。
  •  しかしながら、CTとの位置ずれによるアーチファクトや心尖前壁に生じやすい低値、機種による補正効果の差異など重要な課題もある。心尖での低下については、生理的に見られる形態的apical thinningとアーチファクトがどの程度関与するのかは明確にされていない。心筋標準パターンは変化するので、定量に際しては新たな正常データベースが必要となる。

 

まとめ

 虚血性心疾患の診断におけるSPECT-CTの役割として、以下の観点からさらなる検討が期待されている。

  1. SPECTと冠動脈CTの融合画像がどのように診断に貢献するか
  2. SPECT-CT一体型装置が臨床でどの程度有効か
  3. 石灰化、冠動脈CT、SPECTの情報統合がどのように診断だけでなく、リスク層別化や予後評価に有効か

 [KN: 2010.08.18/10.22]